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行政が進めるヘルスケア産業国際展開推進事業の概要と3つの事例

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2023.03.23

在宅医療 / 介護

DX

経済産業省をはじめとする各省庁が連携して進めるヘルスケア産業国際展開推進事業。この事業は、医療や介護の技術・サービスをビジネスとして輸出促進し、日本の存在感向上や経済成長を狙いとしている。

本記事では、ヘルスケア産業国際展開推進事業の概要と具体事例を紹介する。

ヘルスケア産業国際展開推進事業とは

ヘルスケア産業国際展開推進事業は、相手国の社会課題の解決に貢献することを通じて、世界的に日本の存在感や信頼を向上させることを目的に開始された。この事業はただ相手国に貢献するだけではなく、世界的に拡大するヘルスケア分野の需要や市場を獲得し、日本経済を成長させることも狙いとしている。

ヘルスケア産業国際展開推進事業は、日本の優れた医療や介護の技術・サービスを海外に輸出することを促進する事業である。経済産業省が外務省や厚生労働省と連携して進めており、社会貢献だけでなく、ビジネスとして輸出しているのがポイントである。

ヘルスケア産業国際展開推進事業の仕組み

ヘルスケア産業国際展開推進事業では、日本の優れた技術・サービスを輸出するアウトバウンドと、日本での受診や研修を希望する渡航者を受け入れるインバウンドを推進している。

アウトバウンドの推進では、健康長寿社会を支える日本の優れた医療や介護の技術・サービスを国際展開する支援を行っている。すべての人が適切な保険医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサルヘルスガバレッジ」の促進に寄与し、相手国の医療水準の上昇だけでなく、日本の信頼の向上、日本経済の成長を目指している。

出典:経済産業省ホームページ(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/outbound/index.html)

インバウンドの推進では、日本での研修を希望する医師や、現地で対応が困難な患者の受入支援を行っている。

日本で医療を受けるために来日する外国人渡航者の受入が円滑になるよう、経済産業省が支援しているのが認証組織Medical Excellence JAPAN(以下MEJ)だ。MEJは、外国人の受入医療機関である「ジャパンインターナショナルホスピタルズ」や、来日する外国人をサポートする「認証医療渡航支援企業」といった受入体制の構築を進めている。

出典:経済産業省ホームページ(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/inbound/index.html)

上記のようにアウトバウンドとインバウンドを推進することで新たな機器やサービスを創出し、健康長寿社会の実現や日本の経済成長につなげる循環こそ、ヘルスケア産業国際展開推進事業の重要な仕組みである。

出典:経済産業省ホームページ(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/about/index.html)

ヘルスケア産業国際展開推進事業で実施したアウトバウンドの具体事例

ヘルスケア産業国際展開推進事業では、令和3年には7プロジェクトが採択された。令和4年には10プロジェクトが採択され、さまざまな事業が推進されている。

ここでは、令和3年に採択されて現在事業が進んでいる事例の内、3事例を紹介する。

カンボジア・ベトナムにおける遠隔リハビリテーションサービス実証調査事業

高齢化の進展や脳卒中等の増加などにより、今後リハビリテーションの必要性の高まりが予測されているカンボジアおよびベトナム。両国はリハビリ資源が不足しており、地方部では人的資源も不足している。そのため、リハビリテーションを十分に提供する体制構築が喫緊の社会課題だ。この課題を解決するため、遠隔リハビリテーションサービスの事業化を検討したのが本事業である。

出典:「カンボジア・ベトナムにおけるリハビリテーションサービス実証調査事業報告書 令和4年3月」(経済産業省ホームページ)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_kitahara.pdf)

本事業には主に以下の2企業が参加している。

・株式会社Kitahara Medical Strategies International:北原病院グループに属する医療を海外輸出する企業
・株式会社エクサウィザーズ:遠隔リハビリテーションアプリ「どこでもリハ」を開発・提供し、AIを利活用する情報企業

この2社が協力した本事業で期待される効果は、「どこでもリハ」を用いた遠隔リハビリテーションサービスがカンボジアおよびベトナムに普及することである。

「どこでもリハ」では、トレーニングは動画を見ながら実施するため、トレーニング中のリアルタイムにリハビリテーション人材がいる必要はない。医療の人的資源が不足した環境でも柔軟に対応できるサービスである。

「どこでもリハ」が普及すれば、医療資源が限られた中で効率的なサービス提供が可能となる。従来フォローできていなかった中枢神経疾患患者に対する在宅フォローや、患者の身体機能や生活能力の向上も見込めるだろう。

「どこでもリハ」による教育効果も見逃せない。カンボジアおよびベトナムの理学療法士にはリハビリの質向上を、患者家族には介護負担の軽減といった効果が期待できるだろう。

なお、本事業は以下のような計画で進行している。

・2021年9月 現地での協力体制を構築
・2021年11月 実証調査開始
・2022年1月 ビジネスモデルの検討を開始
・2022年9月 事業を開始
・2023年4月 対象疾患や連携施設を拡大するなど面的展開を計画

タイにおける日本式介護運営の実証調査事業

医療が発展している反面、介護分野に関してはまだ未成熟なタイ。そこに日本式介護を取り入れることで、日本の介護サービスが高品質であることを明らかにし、タイで認知されることを目標に始まったのが本事業である。

また、日本式介護の教育・研修を受けた理学療法士や介護士の派遣ビジネスを行い、その後、日本式介護を取り入れた施設運営支援のサービスによる事業を確立して投資金額を回収することも計画している。

出典:「タイにおける日本式介護運営の強み調査と事業モデル確立に向けた実証事業報告書 令和4年3月」(経済産業省ホームページ)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_ishiikai.pdf)

本事業には以下の3団体が参加している。

・医療法人石井会;日本の医療法人
・Ishii and Partners (Thailand) Co., Ltd.:タイで日本式リハビリテーションの普及に取り組む医療法人石井会のタイ現地法人
・KAIGO Life Co., Ltd.:タイにおける日系介護事業のコンソーシアム

この3団体が協力した本事業で期待される効果は、日本式介護の高品質・高付加価値サービスの提供による高齢者の早期社会復帰や健康維持の後押しである。結果として健康寿命の伸長にも寄与することが期待される。

なお、本事業は以下のような計画で進行している。

・2021年 実証事業に着手。現地の規制や許認可の調査、日本式介護の強み調査などを実施。日本式理学療法士の派遣事業を拡大
・2022年 パートナー企業への出資や事業スキームを合意
・2023年 パートナーの既存施設を日本式介護提供施設へと改修、事業を開始
・2024年 複数の施設運営

バングラデシュにおける民間薬局を軸としたNCDs早期発見システム構築実証およびヘルスケアビジネスの展開調査プロジェクト

医療機関や医療人材が乏しく、プライマリ・ケアの拠点が薬局であるバングラデシュ。その薬局へICTを利用した疾患の早期発見システムを導入することで、医師でなくても疾患の早期スクリーニングができる仕組みの構築を目的としたのが本事業である。

本事業を通じて、現在ほとんど存在していない医療機関と薬局間の連携を促進し、薬局から円滑に医療機関へ患者紹介を行えるシステム導入も行うことで、バングラデシュにおける切れ目のない医療の再構築を狙いとしている。

出典:「バングラデシュにおける民間薬局を軸としたNCDs早期発見システム構築実証及びヘルスケアビジネスの展開調査プロジェクト報告書 令和4年3月」(経済産業省ホームページ)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_miup.pdf)

本事業には以下3企業が参加している。

・株式会社miup:ICTを利用した疾患早期発見システムを開発・展開する医療AIスタートアップ企業
・豊田通商株式会社:さまざまな事業をグローバルに展開するトヨタグループの総合商社
・アイ・シー・ネット株式会社:人間・社会開発を得意とするコンサルティング企業

この3企業が協力する本事業で期待される効果は、患者の医療アクセス改善や医療機関・薬局連携の再構築である。それにより薬局・医療機関・患者3者それぞれにメリットが生まれる。

薬局では患者との接点が増え収益増が期待できる。医療機関では限られた医療リソースの中で医療の提供ができ、日本からの機器導入による医療の高度化も図れる。患者は医療に対するリテラシーや知識が向上し、正しい医療の選択が可能になるだろう。

なお、本事業は以下のような計画で進行している。

・2021年 市場調査やシステムのトライアル実証調査を実施。ビジネスモデルとして収益モデルの検討や展開計画等の策定を実施
・2022年 実証調査の水平展開で規模を拡大。許認可等の販売体制を準備。
・2023年 システムや医療機器・医薬品の販売を開始
・2023年後半 全国展開を検討

まとめ

日本ではヘルスケア産業国際展開推進事業により、医療や介護の技術・サービスの国際展開をビジネスとして推進している。

令和3年には現地でのサービス実施やシステム展開、遠隔でのサービス提供といった事業など7つのプロジェクトが進行し、本記事ではその内3事例を具体的に紹介した。

令和4年も10プロジェクトが採択され、ますますの国際展開が進む医療や介護の技術・サービス。今後のさらなる医療技術の発展と経済成長が期待される。

参考

(1)経済産業省におけるヘルスケア産業政策について 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/01metihealthcarepolicy.pdf

(2)医療の国際展開とは 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/index.html

(3)日本の医療技術・サービスの国際展開支援(アウトバウンド) 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/outbound/index.html

(4)渡航受診者の受入支援(インバウンド) 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/inbound/index.html

(5)令和3年度 ヘルスケア産業国際展開推進事業(全体編)報告書 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_mej.pdf

(6)カンボジア・ベトナムにおける遠隔リハビリテーションサービス実証調査事業報告書 令和4年3月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_kitahara.pdf

(7)タイにおける日本式介護運営の強み調査と事業モデル確立に向けた実証事業報告書 令和4年3月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_ishiikai.pdf

(8)バングラデシュにおける民間薬局を軸としたNCDs早期発見システム構築実証およびヘルスケアビジネスの展開調査プロジェクト報告書 令和4年3月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r3fy_hojyo_miup.pdf

 

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