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【ウィーメックスオンラインセミナー】“医薬協業”と“薬局3.0”

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2023.06.06

医療機関DX

PHCホールディングス株式会社の事業子会社であるウィーメックス株式会社は5月18日、薬剤師・薬局経営者向けオンラインセミナー「“脱調剤薬局”で薬剤師の働き方はどう変わるか」を開催した。講演したのはファルメディコ株式会社の代表取締役と医療法人嘉健会思温病院の理事長を務める狭間研至氏。経営者と医師という2つの視点から、昨今の薬局を取り巻く課題や解決策について語った。

薬剤師の専門性が活かせていない問題

日本における薬局の数は約6万軒。薬剤師は32万人を超えている。その中で狭間氏は「薬剤師の専門性が活かせていない」と指摘した。薬剤師は薬理学、薬学動態学、製剤学のプロフェッショナルだ。医師とは異なる専門性で、患者の容態にアプローチすることができる・狭間氏は「薬剤師の本来の仕事は薬を出した後。薬を出した後の患者の容態を診てひらめくことにバリューがある」とし「医師は処方、薬剤師は調剤という形骸化した医薬分業によって患者のポリファーマシーといったリスクが増加する」と医薬分業の問題点を口にしました。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、薬局の経営状況は悪化した。約4割の薬局が赤字だという。「不安を抱える患者は診療や薬を求めるのではなく、医師や薬剤師に会うことで不安を解消している。しかし、在宅医療において医師や看護師は訪問するが、薬局が訪問することは少ない。薬剤師が薬を持参しバイタルチェックをする。医師の訪問診療に同行して服薬指導を行うといった展開が重要ではないか」と狭間氏。薬剤師の専門性を活かすため、薬局業界はまさにビジネスモデルの大転換を図る時期に差し掛かっている。

薬剤師のフィードバックが医師の治療戦略に

なぜ、薬剤師の専門性が活かせない仕組みなのか。それは偏に、調剤業務が多忙で薬を患者に渡すまでが業務となっているからだろう。薬局の業務ほぼ全てを薬剤師が行う。つまり、暗黙知が散見している。これを解決するのが医療DXだ。IT技術を活用して業務を見える化、言語化する。狭間氏は「暗黙知を形式知にすること」を提唱している。これにより、薬剤師は専門性が高い業務を実施する一方、業務的には重要だが薬学的専門性が無い仕事は事務方に任せることが可能になる。

薬剤師の専門性を活かすには、服薬した患者のその後を診ることだ。そこで得た情報を医師にフィードバックする。医師にとって薬剤師から得た情報は新しい治療戦略に役立つ。そして、患者にとっては薬の処方内容が最適化される。薬剤師の働き方を見直せば、このような“医薬協業”のサイクルを生み出すことができる。

薬剤師の医療における役割の変革

これからの薬剤師に求められるのは調剤と薬の受け渡しという「対物業務」ではなく、訪問による服薬指導や医師との連携といった「対人業務」だ。狭間氏は薬剤師の医療における役割の変革について「マラソンの給水ポイントにいるスタッフから、専門性と個性を活かしたランナーのためのコーチとなるべき」と表現した。

従来の薬局は医師の処方箋に基づいた調剤が主体だった。いわゆる“薬局2.0”である。狭間氏が訴えるのは、介護施設や在宅ケアなどの調剤や薬の配達にとどまらない地域医療と一体化した新しい世代の薬局。“薬局3.0”だ。

データやデジタル技術の進歩によって、薬局は立地依存から機能性で選ばれるようになるだろう。対象患者は日本中になる。「デジタル技術の進歩によってオンライン診療などが増えれば、医師と患者の物理的距離は離れて薬剤師が近しい存在になるのでは」と狭間氏は予測している。新しい時代にマッチした在るべき姿の薬局に変革させるには、経営者が積極的に仕組みを変えていくことが重要となる。

狭間 研至
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長
医療法人嘉健会 思温病院 理事長
医師、医学博士
1969年,大阪生まれ.1995年大阪大学医学部卒業後,大阪大学医学部附属病院,大阪府立病院(現 大阪急性期・総合医療センター),宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事.2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了後,
実家の薬局を継承し、ファルメディコ株式会社を設立。2014年より病院運営にも参画し、2016年から医療法人嘉健会思温病院理事長として、地域医療にも携わっている。

 

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