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医療用大麻が解禁 今後の動向と影響について

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2022.12.09

治療ソリューション

創薬 / 治験支援

行政 / 自治体

現在、日本では大麻を原材料とした医薬品の施用は禁止されているが、医療ニーズに対応するため、厚生労働省が大麻取締法等の改正を検討中である。実際に規制が改正されれば、大麻を原材料とした医薬品が許可されるだけでなく、新たな産業利用やCBD製品に係る原材料の生産、大麻由来の医薬品研究開発などが進む可能性がある。

大麻とは

大麻取締法の概要

現在「大麻」は大麻取締法によって以下のように定義されている。

「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。

※画像出典:「大麻取締法等の改正に向けた検討状況について」厚生労働省(2022/08/05)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000972695.pdf

すなわち、日本において大麻は部位を基準に制限されており、現状この部位を元に生産された医薬品や製品は使用することができない。

大麻の成分

大麻には100種類以上のカンナビノイドという化合物が含まれており、カンナビノイドの一種として代表的なものにTHCとCBDがある。

THCは幻覚等の精神作用を示す成分であり、化学合成されたものは麻薬として日本で規制されている。

CBDは幻覚作用を有さず、抗てんかん作用や抗不安作用等を有しており、毒性は低いとされている。規制部位以外から採取されたCBDを使用した食品やサプリメントは国内にも輸入され、海外では一部治療薬としてCBDを利用している国もある。

このCBDを成分として含んだ医薬品が海外で実際に使用されていることを受けて、日本でも医療用大麻を使用できるような規制への改正が検討され始めたのだ。

アメリカを中心に各国で進む医療用大麻の導入

米国を始めとするG7諸国で実際に承認された、大麻草を原料とする医薬品

実際に海外で承認されている医療用大麻として英国のGW Pharmaceuticals(GWファーマシューティカルズ)社が開発したEpidiolex(エピディオレックス)がある。

2018年に米国FDAはEpidiolexを重度のてんかん症候群であるレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群の治療薬として承認した。また2019年には欧州委員会も同薬を承認し、臨床現場で現在使用されている。

Epidiolexの対象疾患の1つであるレノックス・ガストー症候群は、既存の治療法で発作が抑制される患者は10%未満であり、ドラべ症候群も治療薬の選択肢が狭い。

したがって国内でも有効な治療薬が望まれている状況であった。

参照:「厚生労働行政推進調査事業費(厚生労働科学特別研究事業) 分担研究報告書」厚生労働省(2021)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/20200621A-buntan2_0.pdf

医療用大麻のニーズへ対応するために合法化を検討

Epidiolexは大麻草の規制部位から抽出されたCBDを含むため、現在でも日本では輸入及び施用が原則禁止されている。しかしながら日本国内にもレノックス・ガストー症候、ドラべ症候群の患者がおり、医師と患者から確かなニーズがあるのだ。

このようなニーズを踏まえて、2019年3月から厚生労働省より国内での治験が認められた。また2021年1月には厚生労働省で「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が立ち上がり、医療用大麻のあり方が具体的に議論され始めたのである。

今年6月には同検討会で大麻由来医薬品の法整備を早期に進めること、また成分濃度基準の整備を設ける方針でとりまとめが行われた。

成分規制変更に伴う今後の日本

部位規制から成分規制に変更を検討

大麻由来医薬品を使用可能にする上で、従来の部位規制が障壁となる。

そのためCBDは比較的毒性が低いことを踏まえて、幻覚作用をもつTHCを基準とする成分規制に変更される方向性となっている。

今後THCを中心とする成分規制への移行に伴い、医薬品をはじめとする、花穂や葉から抽出したCBD等の成分を含んだ製品が利用可能になる。しかしCBD製品で、果たして規制対象成分であるTHCの残留をなくせるかという課題も考慮されている。

実際に日本で導入されたら

したがって現在はまだ成分規制へ改正を検討している段階である。大麻乱用の防止や成分検査体制の充実などの課題もあるが、もし実際に制度が変更されたら、これまで輸入することができなかった医薬品やCBD製品などが市場に流通することが見込まれる。

例えばEpidiolexを始めとする医薬品が、臨床現場で活用されるようになるのではないか。加えて医療用大麻の研究も進むのではないかと推測される。実際に、認知症へ医療用大麻を活用する研究が行われており、今後効果が認められて治療薬として承認されることがあれば、高齢化社会である日本の医療大麻市場はさらに拡大するだろう。

Epidiolexを販売している英国のGW Pharmaceuticals社は、昨年日本法人であるGW Pharma株式会社を設立した。今後医薬品業界に参入していくだろう。GW Pharmaに続き、キャノピーグロースコーポレーションやメドレリーフ・コーポレーションといった医療用大麻の主要企業

が日本の市場に参入する可能性もある。

また今までの国内におけるCBD市場では、海外からCBD製品を輸入して日本で販売するビジネスモデルが主流であった。しかし最近のstartup企業の中には、原料(CBD)だけを海外から輸入し、日本で加工・製造を行ったCBD製品を生産する企業も増えている。

したがって実際に制度が変更されたら、医療向上、健康増進目的にCBDの正しい活用が必要となる。また新たな産業利用やCBD製品に係る原材料の生産、大麻由来の医薬品研究開発などが進み、大麻市場規模が拡大していくだろう。

参考

「大麻取締法等の改正に向けた検討状況について」厚生労働省(2022/08/05)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000972695.pdf

「追加説明資料 (広報、CBD製品、薬物事犯統計)」厚生労働省(2021/04/23)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000791097.pdf

「大麻由来医薬品のてんかん治療への活用」厚生労働省:第4回大麻等の薬物対策のあり方検討会資料(20210331)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000762951.pdf

「厚生労働行政推進調査事業費(厚生労働科学特別研究事業) 分担研究報告書」厚生労働省(2021)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/20200621A-buntan2_0.pdf

「CBD製品市場に関する調査を実施(2022年)」矢野経済研究所(2022/08/25)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3013

 

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