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【事業編】Medical baseが描く、あるべき患者体験の実現に向けて

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2022.12.10

インタビュー

医療機関DX

オンライン診療

DX

昨今、医療業界にもDX化の波が押し寄せている。その中で注目されているのが、クリニック運用の効率化とDX化が簡単にできるMedical Baseだ。前回は上田代表のキャリアやWrustyが医療業界に飛び込んだ理由について聞いた。後編では、サービスの詳細や今後の事業戦略についてさらに迫っていく。

【プロフィール】
東京理科大学で物理学を専攻。在学中にスタンフォード大学研究室で脳波解析を学ぶ。大学卒業後はシリコンバレーでスタートアップの創業メンバーを経験。AIロボットやメタバースの開発に携わる。新型コロナをきっかけに日本に帰国後、2017年にAI、医療DXのITスタートアップ「株式会社Wrusty」を起業。

Medical Baseが予想する自費診療の波

――前回はWrustyがなぜメディカル業界に飛び込んだのか伺いました。今後の市場がどう動いていくかとお考えでしょうか?

上田氏:
私の個人的な考えでは、自費診療(保険診療に該当せず、治療費の全額を患者様が負担する診療)がカバーする範囲が増していくと思っています。例えば、エビデンスが認められていても保険適応となっていない薬剤やダイエット、美容等の商品の割合が増えていくと考えています。

いち技術者として、新しい技術というのはまず自費診療から生まれていくものとも考えているので、これからはVRの技術と同じように、テクノロジーを用いることで、更なる人間の身体に関する解明に加え、人体の機能拡張すら実現する未来もそう遠くないのではないか、と考えています。

――なるほど。医療でも情報の発達と似通っている部分があるということですね。保険診療との棲み分けはどうお考えなのでしょうか?

上田氏:
保険診療(健康保険等の公的医療保険制度が適用される診療)は、自費診療でエビデンスが実証された上で、世の中に広く普及される必要があると判断されたもの、さらに高齢化が進む中、コストが見合うものがその適用になるべきだと考えます。先進的なソリューションの広がりにあたっては、概ね先んじて資本力のあるプレーヤー(顧客)による初期コストの回収が必須となります。医療の発展にも、自費診療という体系はそう言った役割を果たします。先進医療が自費診療なのも同様です。

その先で国が補填する意味のあるものが、保険適応となっているイメージがあります。

同時に注目したいのが高齢化社会です。今後ますます医療費の財政が圧迫されていくことが予想できます。この流れから自費診療でカバーしなければいけない領域は増えていくでしょう。

自費診療が医療のイノベーションの受け皿になる。人体のフロンティアがどんどん開拓されていく中で、自費診療の拡大は疑いようがないのかなと感じています。これからも保険診療の先駆けとしてあり続けていくと考えています。

Medical Baseで目指す世界とは

――Medical Baseについて、簡単に教えていただけますでしょうか。

上田氏:クリニックの院内業務から顧客管理、オンライン診療まで一括して可能なCRMシステムです。患者様にはアプリ一つで新規予約から決済・再訪まで必要な機能を豊富に提供し、スムーズな診療体験を実現します。

また、アプリの機能を開発不要(ノーコード)でカスタマイズし、クリニックの運用・ブランディングに合わせたオリジナルアプリを作成することができるため、あらゆるクリニックに柔軟に導入することが可能です。

医療機関の業務を全面的にDXする一体型SaaSを開発

――Medical Baseは競合他社とどのような違いがあるのでしょうか?

上田氏:
Medical Baseが提供する医療ITに関しては、問診やオンライン診療のように単発のサービスが多いマーケットです。そのため医療機関がIT化を推し進めるにあたって、それぞれ個別のサービスを利用・設定しなければいけません。しかもデータ連係はされていないことがほとんどです。

個々のIT化はできていたとしても、全体の業務に目を向けるとオペレーションコストが非常に高くなっています。

Medical Baseではそれらを1つのサービス上で一気通貫して管理・統一することが可能なため、クリニックやスタッフがより本質的な患者さんのサポートに時間を割けるようになります。

実感した医療現場とITの差

――サービスを医療現場で活用してもらう際に感じた課題はありますか?

上田氏:
率直に申し上げると、IT技術に関しては大きく世界が違うな、とカルチャーショックを受けました。そもそも医療業界にはITが得意な人が多いわけではないので、ポンと渡せば効率化できるわけではありませんでした。

その経験から、どうすれば使ってもらえるかは設計の段階で大きなポイントとして考えています。

――実際に利用する人はどのような業務の方を想定しているのでしょうか?

上田氏:
受付のスタッフの方、医療事務など、基本的には医師ではない方を想定しています。
電子カルテは医師が使用し、Medical Baseはそれ以外のスタッフが使用するというイメージです。そのため現場のスタッフさんに機能のヒアリングをすることも多くあります。

最終地点は患者の体験向上

――Medical Baseが目指している理想のプロダクトとは?

上田氏:
患者さん側のユーザー体験にフォーカスすることを非常に重視しています。

電子カルテの場合、導入した病院内の業務が効率化した話は聞きます。ですが、その先にいる患者さんが安心して医療を受けられる体制が大切です。医療機関だけではなく、患者さんにも安心・スムーズなインフラを作りたいという思いがポイントとしてあります。

自由診療での導入から保険診療の壁を切り拓く拡大路線

――Medical Baseが自由診療から導入を進めていく理由とはなんでしょうか?

上田氏:
マーケットサイズが主な理由です。医療においてメインストリームはあくまでも保険診療です。

自由診療のソフトウェアを作りたいのではなく、医療ITに対してチャレンジしたい思いが根本的にあります。そのため、保険医療に対してもコミットしていきたいと考えています。

しかし、保険診療のマーケットに入っていく上で重要なのが集患に対する考え方です。クリニックさんによっては、「待っていれば患者さんが来る」と認識している場合があります。それに対してどうサービスを訴求できるかは、大きな壁だと認識しています。

自費診療の場合、経済合理性を説明するのは簡単ですし、そう言った考え方に対してもアレルギーはあまり見受けられません。ですが、保険診療にあたっては集患に対する考え方が自費診療とは異なり、効率化によって患者さんとコミュニケーションができるメリット自体、納得感があるものではないことが往々にして発生します。
その点については保険診療へ参入する壁かなと感じています。

――保険診療へと踏み出すタイミングは具体的に考えているのでしょうか?

上田氏:

医療機関におけるサービス導入の動機としては、経営改善や業務効率化をしたいと考えているクリニックさんが中心となっており、既に保険診療のクリニックさんにもご利用いただいています。

オンライン診療に対する保険点数の改訂も注視すべきトレンドと考えています。Medical Baseの機能の一つでもあるオンライン診療についてまだまだ抵抗感のある医療機関も多い中、それでも今後の医療効率化、費用削減のトレンドを踏まえると今後も大きな波が来るものと考えています。

――今後の顧客拡大の戦略を可能な範囲で教えてください。

上田氏:
現在は、顧客拡大のポイントとして大きく3つ考えています。

  1. 自由診療の領域における機能をさらに拡充し、自費診療のユーザーをさらに拡大する
  2. 健診等の保険診療に近い自費診療の機能を拡充させていく

VCの選び方とコミュニケーション

――スタートアップの悩みの1つにVCとの出会いと選定があると思いますが、接点はどのように作っていますか?

上田氏:
私は知り合いからの紹介で知り合うことが多いですね。実は交流会のような催しにもあまり出ていないのですが、出会いにはかなり恵まれていると思います。

私の考え方になるのですが、相性の良いVCに出会おうと思うと打算的なコミュニケーションになってしまいます。それでは調達云々の前に、良い人間関係が築けません。打算的に人と近付こうとすると、相手にもわかってしまうからです。

純粋にその人から学んだり、自分から提供したりといった人間関係を重要視しています。

――VCを選ぶ上での基準などはありますか?

上田氏:
自分がVCに何を求めるかが大切です。お金を出して欲しいのか、採用を手伝って欲しいのかなど、自分が求めているものを決めなければなりません。なるべくお金以外が良いと思っています。

具体的には自分が苦手とするものですね。プロダクトを作ったりビジョンを描いたりといったことは得意なのですが、以下は誰かと一緒に実施していきたいと考えていることです。

  • 目の前の数字の管理
  • 財務会計
  • チームビルディング

これらに対して耳が痛いほど突っ込んでくれる人が重要かなと考えています。

――ありがとうございます。VCの交渉についてはどのように行なっていますか?

上田氏:

自分が欲しいタイミングではなく、相手が欲しいタイミングで交渉することを意識しています。自分が欲しいタイミングだとどうしても足元を見られてしまうので、良い条件で交渉できることもあまりありません。

そのため相手が欲しいタイミングを作って交渉することが重要だと考えています。

VCがお金を入れたいタイミングは多くの場合企業にとってお金があまり必要ないタイミングです。逆に企業がお金を欲しいタイミングはVCがお金を入れたくないタイミングなので、微妙にズレが生じてしまうんですよね。

組織は拡大フェーズへ

――今後、組織は拡大フェーズへ入っていくと思いますが、どのような人を採用していきたいですか?

上田氏:
採用したい人材の属性は2種類あります。

  1. 行政資料等を踏まえた、医療のトレンドをキャッチアップしてかつ予測できる人材
  2. 顧客体験を考えられる人材

特に2は重要です。医師の意見だけを鵜呑みにすると、結局イチから作りましょうとなります。そうではなく、中立的な立場で現場の意見を聞きながら、どうあるべきかを考えられる人材が重要だと考えています。

――上田さんはSNSも運用されていますが、活用方法についてお聞きできますか?

上田氏:

Twitterを2021年の11月から始めています。知り合いの経営者から勧められて開始した形で、私自身、マーケティング畑の人間ではないので当初は勉強の意味合いが強くありました。

運用していくうちにTwitter経由で人を巻き込むことにも繋がっています。結果として採用、事業成長においてもプラスになり始めています。

株式会社Wrusty公式Twitter

Medical Baseの今後の展望

――今後の事業展開について最後に一言お願いします!

上田氏:
引き続きクリニックさんに愛されるアプリを提供し、その先に患者さんの医療体験向上につながるような未来を作っていきたいと考えています。

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